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釧路地方裁判所 平成6年(わ)94号 判決

本店所在地

釧路市若松町一三番七号

中本興業株式会社

(右代表者代表取締役 中本實)

本店所在地

釧路市若松町一三番七号

中本商事株式会社

(右代表者代表取締役 中本浩二)

本籍

釧路市若松町三番地の一六

住居

同市愛国東一丁目二三番一三号

職業

会社役員 中本實

大正一三年二月二二日生

主文

被告人中本興業株式会社を罰金一四〇〇万円に、被告人中本商事株式会社を罰金五〇〇万円に、被告人中本實を懲役一年六か月に、それぞれ処する。

被告人中本實に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

第一犯罪事実

被告人中本興業株式会社(以下「被告人中本興業」という。)は釧路市若松町一三番七号に本店を置き、貸店舗業などを目的とする資本金三〇〇万円の株式会社、被告人中本商事株式会社(以下「被告人中本商事」という。)は、右同所に本店を置き、土地の売買に関する事業などを目的とする資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告人中本實(以下「被告人中本」という。)は、右各被告人会社(以下、両会社をいうときは「被告人両社」という。)の代表取締役として、その業務全般を統括していた。被告人中本は、被告人両社の業務に関し、それぞれ法人税を免れようと企て、別紙犯罪事実一覧表(以下「別表」という。)1ないし3記載のとおり、別表「ほ脱方法」欄の方法により所得の一部を秘匿した上、別表記載の各事業年度の被告人両社の実際所得金額がそれぞれ別表「実際所得金額」欄の各金額で、これに対する法人税額が別表「実際法人税額」欄の各金額であるにもかかわらず、別表「申告日」欄の各年月日に、同市幣舞町三番一一号の所轄釧路税務署において、同税務署長に対し、右各事業年度の被告人両社の所得金額又は欠損金額が別表「申告所得金額」欄の各金額で、これに対する法人税額が別表「申告法人税額」欄の各金額である旨の虚偽の法人税確定申告書をそれぞれ提出し、もって、不正の行為により、被告人両社の右事業年度における正規の法人税額との差額(別表「ほ脱税額」欄の各金額のとおり。)を免れた。

第二証拠

括弧内の番号は証拠等関係カードの検察官請求番号う示す。

一  別表1ないし3の事実全部について

1  被告人中本興業代表者兼被告人中本の別表1ないし3の事実全部について

(一) 公判供述

(二) 検察官調書(乙13)、大蔵事務官調書(三通。乙5、10、11)

2  被告人中本商事代表者中本浩二検察官調書(乙28)、大蔵事務官調書(乙23)

3  田中光子の検察官調書(甲88)、大蔵事務官調書(甲84)

4  渡辺慶三の大蔵事務官調書(甲52)

5  捜査報告書(甲3)

6  「証明書」と題する書面(甲40)

7  上申書(三通。甲32、36、37)

8  答申書(甲44)

9  押収してある大学ノート一冊(平成六年押第二二号の1)、メモ一綴(同号の2)

二  別表1の事実について

1  被告人中本興業代表者兼被告人中本の大蔵事務官調書(二通。乙6、7)

2  被告人中本商事代表者中本浩二の大蔵事務官調書(二通。乙21、22)

3  黒田喜久の検察官調書(二通。甲48、49)、大蔵事務官調書(二通。甲45、47)

4  佐藤年雄(二通。甲50、51)渡辺慶三(甲53)、竹本義直(二通。甲55、56)、田中光子(二通。甲85、86)の各大蔵事務官調書

5  「給料手当調査書」(甲5)、「減価償却費調査書」(甲6)、「修繕費調査書」(甲7)、「手数料調査書」(甲8)、「租税公課調査書」(甲9)、「交際接待費調査書」(甲10)、「受取利息調査書」(甲11)、「固定資産売却益調査書」(甲12)、「事業税調査書」(甲13)、「道民税利子割調査書」(甲14)、「負債利子損金不算入額認容調査書」(甲15)、「家賃売上調査書(その他所得)」(甲16)、「認定利息調査書(その他所得)」(甲17)、「減価償却費調査書(その他所得)」(甲18)、「雑収入調査書(その他所得)」(甲19)、「調査事績報告書」(二通。甲31、62)、「確認書」(二通。甲38、39)と各題する書面

6  上申書(甲33)

7  商業登記簿謄本(乙16)

8  押収してあるファイル綴一冊(平成六年押第二二号の3)、法人税決議書綴一冊(同号の5)

三  別表2、3の事実について

1  被告人中本興業代表者中本浩二の公判供述

2  被告人中本興業代表者兼被告人中本の大蔵事務官調書(三通。乙8、9、12)

3  被告人中本商事代表者中本浩二の大蔵事務官調書(乙25)

4  中本一美の検察官調書(甲82)、大蔵事務官調書(四通。甲78ないし81)

5  田中光子(甲27)の大蔵事務官調書

6  捜査報告書(甲27)

7  「調書事績報告書」(二通。甲4、63)、「売上高調査書」(甲20)、「期首棚卸高調査書」(甲21)、「期末棚卸高調査書」(甲22)、「減価償却費調査書」(甲23)、「租税公課調査書」(甲24)、「受取利息調査書」(甲25)、「損金の額に算入した道府県民税利子割調査書」(甲26)、「欠損申告額調査書」(甲28)、「欠損金の当期控除額調査書」(甲29)、「証明書」(二通。甲41、42)と各題する書面

8  上申書(二通。甲34、35)

9  商業登記簿謄本(二通。乙17、18)

10  押収してあるファイル綴一冊(平成六年月日押第二二号の4)、法人税決議書綴一冊(同号の6)

第三適用法令

一  罰条

1  別表1の行為(被告人中本及び同中本興業)

法人税法一五九条一項(被告人中本興業につき更に同法一六四条一項)

2  別表2、3の各行為(被告人中本及び同中本商事)

いずれも法人税法一五九条一項(被告人中本商事につき、いずれも更に同法一六四条一項)

二  刑種選択等

1  被告人中本興業

別表1の罪につき、情状により、罰金の多額について法人税法一五九条二項を適用

2  被告人中本

別表1ないし3の各罪につき、いずれも懲役刑のみを選択

三  併合罪加重

1  被告人中本商事 刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人中本 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い別表1の罪の刑に加重)

四  刑の執行猶予(被告人中本) 刑法二五条一項

第四量刑事情

本件は、当時、被告人両社の代表取締役の地位にあり、その業務全般を統括していた被告人中本が、被告人両社の法人税を免れようと企て、判示のとおり、それぞれ虚偽の過少申告により、被告人中本興業において一事業年度分の所得一億六六六〇万一三六〇円を秘匿して法人税六二四七万五四〇〇円を、被告人中本商事において二事業年度分の所得合計六二〇九万六六一五円を秘匿して法人税合計二一六六万七九〇〇円を不正に免れた事案である。

被告人両社のほ脱税額は高額にのぼる上、被告人中本興業の一事業年度におけるほ脱率は約八五パーセント、被告人中本商事の二事業年度にわたるほ脱率は一〇〇パーセントと高率であること、さらに、主なほ脱の方法・手口をみると、被告人中本興業は、旧本社ビル及びその敷地の売却に際し、買主に依頼し代金額を過少にした虚偽の不動産売買契約書を作成させたり、取引先から入手した虚偽の工事代金領収書を使用して架空の譲渡原価を計上する方法により固定資産売却益を圧縮し、また、被告人中本商事も、その経営にかかるゴルフ練習場の現金収入の売上げの一部を恒常的に除外していたもので、その態様はいずれも計画的かつ悪質であり、被告人らの刑事責任は重い。

もっとも、被告人中本は、本件が発覚した以降、ほ脱の事実をほぼ率直に認め、被告人両社において修正申告をした上、既に、本税に全額納付し、重加算税、延滞税の一部を納付していること、被告人中本は、本件を契機に、被告人中本商事の代表取締役を辞任するとともに、被告人中本興業の中核事業である自動車学校経営からも手を引くなど、反省の態度を明らかにしていること、被告人中本には、昭和四五年以前に受けた罰金刑等の前科があるにとどまること(なお、被告人中本興業は、昭和四六年風俗営業等取締法違反の罪により罰金刑を受けている。)などの諸事情も認められる。

そこで、被告人らにそれぞれ主文掲記の刑を科するとともに、被告人中本についてはその刑の執行を猶予することとした。

(検察官小林健司、弁護人今重一各出席。求刑・被告人中本興業につき罰金一八〇〇万円、同中本商事につき罰金六〇〇万円、同中本につき懲役一年六か月)

(裁判長裁判官 土屋靖之 裁判官 石橋俊一 裁判官 市川太志)

(別紙)

犯罪事実一覧表

〈省略〉

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